耳コピとは、楽譜を見ずに曲を聴いて音を拾い、楽器やDAWで再現すること。音楽をやる上で最も実践的なスキルの一つで、耳コピができるようになると演奏力・作曲力・音感が同時に鍛えられます。
「自分には絶対音感がないから無理」と思っている人も多いですが、耳コピに必要なのは絶対音感ではなく「相対音感」。音と音の関係性を聴き取る力のことで、これは後天的に鍛えられます。コツを押さえて簡単な曲から始めれば、初心者でも耳コピはできます。今回は具体的なやり方を手順ごとに紹介していきます。

耳コピに必要な準備
再生アプリ:速度変更・区間リピート機能があるものが必須。スマホなら「ハヤえもん」が無料で使いやすい。ヤマハの「Extrack」は音源分離やコード解析もできる。
楽器 or DAW:聴いた音を確認するために使う。ピアノが音程の確認に適しているが、自分のメイン楽器でOK。
メモ用紙 or DAW:コピーした音を記録する。DAWに直接打ち込んでもいいし、手書きのメモでもいい。
イヤホン or ヘッドホン:スピーカーより細かい音が聴き取りやすい。特にベースラインの聴き取りにはイヤホンが有利。
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耳コピの基本手順(5ステップ)
ステップ1:曲を何度も聴いて全体像をつかむ
まず曲全体を5〜10回くらい繰り返し聴いて、構成を把握します。Aメロ・Bメロ・サビの区切り、使われている楽器、テンポ感をざっくりつかむのが目的です。
この段階では細かい音を拾おうとしなくてOK。「サビはこんな感じのメロディだな」「ベースがこう動いてるな」くらいのざっくりした理解でいいのです。好きな曲を選ぶとモチベーションが続きやすいので、自分が何度も聴きたい曲を選びましょう。
ステップ2:キー(調)を特定する
曲のキーを見つけるのが次のステップ。コツは曲の最後の音やコードに注目すること。多くの曲は最後にトニック(I)に解決するので、曲の最後のコードがキーのヒントになります。
ピアノで「ドレミファソラシド」を弾きながら曲に合う音階を探すのも有効な方法です。合わない音が一つでもあれば別のキーを試します。慣れると数分で特定できるようになります。
ステップ3:ベースラインを拾う
ベース音がコード進行の手がかりになります。低音に集中して、ベースが弾いている音を1音ずつ拾っていきましょう。イヤホンの方が低音が聴き取りやすいのでおすすめです。
再生アプリで速度を75%くらいに落とすと、速いパッセージも聴き取りやすくなります。区間リピート機能を使って、1小節〜2小節ずつ繰り返し聴きながら拾っていくのが効率的です。
フレーズ全体で取ろうとするよりも、一音ずつ正確に取っていく方が結果的に速いのがポイントです。
ステップ4:コード進行を割り出す
ベース音をもとにコードを推測します。ベース音がCならCメジャーかCマイナー。実際にピアノやギターで鳴らして、曲に合う方を選びましょう。
ダイアトニックコードの知識があると推測精度が上がるのがポイント。キーがCメジャーなら、使われるコードはC、Dm、Em、F、G、Am、Bdimの7つが基本。この中から選べばいいので、推測の幅がぐっと狭まります。
ステップ5:メロディを拾う
コード進行が分かったら、メロディを1フレーズずつ拾っていきます。再生アプリの速度を50〜75%に落とすと聴き取りやすくなります。
メロディはコードの構成音(コードトーン)を中心に動いていることが多いので、コード進行が分かっていると「次はこの音かな」と予測しやすくなります。

耳コピが上達する5つのコツ
1. 簡単な曲から始める
童謡やシンプルなポップスから始めるのが鉄則。楽器の数が少ない曲ほど各パートが聴き取りやすいです。「きらきら星」「かえるのうた」レベルから始めて、徐々に難易度を上げていきましょう。いきなりジャズやプログレに挑戦するのはNGです。
2. 速度を落として聴く
再生速度を50〜75%に下げると、速いパッセージも聴き取れるようになります。「ハヤえもん」などのアプリなら、ピッチ(音の高さ)を変えずにテンポだけ変えられるので、正確な耳コピが可能です。
3. パートごとに分けて拾う
全部の音を一度に聴き取ろうとしないこと。ベース→コード→メロディの順で1パートずつ攻略するのが基本です。1パートに集中すると、他の音が邪魔にならなくなっていきます。
4. 答え合わせをする
コード譜サイトで自分のコピー結果を確認します。間違いを発見して修正する過程で耳が鍛えられるので、答え合わせは上達に必須のステップです。
5. 好きな曲を選ぶ
馴染みのない曲やあまり好きになれない曲だと、途中で飽きてしまいます。自分が何度も聴きたい曲を選ぶことで、繰り返し聴く作業が苦にならなくなります。
耳コピに役立つアプリ・ツール
ハヤえもん(無料)
速度変更・ピッチ変更・区間リピートの3拍子が揃った耳コピの定番アプリ。スマホで使えるので手軽です。ハヤえもん公式サイトからダウンロードできます。
Extrack(ヤマハ)
音源分離・コード解析・キー検出・スピード変更がリアルタイムで行えるアプリ。特にコード解析機能は耳コピの答え合わせにも使えます。
U-FRET
コード譜サイトの定番。耳コピの答え合わせに使えます。U-FRETで曲名を検索すれば、コード進行が確認できます。
musictheory.net
音感トレーニング用のWebサイト。Ear Trainingのセクションで、音程の聴き取り練習ができます。耳コピの基礎力を鍛えるのに最適です。musictheory.netから無料で利用可能です。
完璧を求めすぎない:初心者は70%合っていれば上出来。経験を積むことの方が大事。
長時間やりすぎない:集中力が切れると効率が落ちる。1回30分程度がちょうどいい。
難しい曲に最初から挑戦しない:ジャズやプログレは上級者向け。まずはシンプルな4コードのポップスから。
答え合わせをサボらない:間違いに気づかないまま進めても耳は鍛えられない。

耳コピで得られる3つのスキル
音感が鍛えられる
繰り返し音を聴き取る作業を続けることで、相対音感が自然に身につきます。「この音からあの音まで何度離れているか」が感覚的に分かるようになり、演奏にも作曲にも活きてきます。
コード進行のパターンが身につく
何曲も耳コピしていると、「この進行、前にもあったな」という経験が増えていきます。よく使われるコード進行のパターンが体に染み込んでいくので、作曲やアレンジの引き出しが自然に増えます。
楽曲分析力が上がる
耳コピを通じて「この曲はなぜ良い曲に聴こえるのか」を構造的に理解できるようになります。この分析力は演奏・作曲・編曲のすべてに役立つ、音楽スキルの土台になります。
耳コピの練習に最適な曲の選び方
最初の1曲目:楽器が少ないシンプルな曲
アコースティックギターの弾き語り、ピアノ弾き語りなど、楽器の数が少ない曲から始めましょう。パートが少ない分、各音が聴き取りやすく、初めての耳コピでも挫折しにくいです。
2〜3曲目:4コードのポップス
コード進行がシンプルなポップスに挑戦。C→G→Am→Fのような定番進行の曲を選ぶと、コード感覚が効率よく身につきます。
4曲目以降:好きなジャンルの曲
基礎が身についたら、自分が好きなジャンルの曲に挑戦。ここまで来ると「前より聴こえる音が増えた」と実感できるはずです。耳コピは曲数を重ねるほど精度が上がっていくスキルなので、とにかく数をこなすことが上達の近道です。
よくある質問
Q. 絶対音感がないと耳コピできない?
A. できます。耳コピに必要なのは「相対音感」(音と音の間隔が分かる力)で、これは後天的に鍛えられるスキルです。絶対音感がなくても問題ありません。
Q. 耳コピにどのくらい時間がかかる?
A. 初心者なら簡単な曲で数時間〜数日。慣れてくれば1曲30分〜1時間で主要パートをコピーできるようになります。最初は時間がかかっても気にしないでください。
Q. ギターとピアノ、耳コピに向いているのはどっち?
A. ピアノの方が音程の確認がしやすいです。鍵盤が視覚的に分かりやすく、コード全体を一度に鳴らせるので。最初の音の確認はピアノで行い、自分の楽器で再現するのが効率的です。
Q. 耳コピとタブ譜を見て弾くのは何が違う?
A. タブ譜を見て弾くのは「読んで再現する」作業。耳コピは「聴いて自分で判断して再現する」作業。後者の方が音感・判断力・音楽的な理解力が鍛えられます。
まとめ:まずはベースラインから拾ってみよう
耳コピの基本手順は、曲を繰り返し聴く→キーを特定→ベースラインを拾う→コードを推測→メロディを拾う、という流れ。速度を落として1パートずつ攻略すれば、初心者でもできます。好きな曲を1曲選んで、今日からベースラインの聴き取りに挑戦してみてください。3曲コピーすると、耳が確実に変わっていることを実感できます。最初の1曲目は時間がかかっても気にしなくて大丈夫です。2曲目は1曲目の半分の時間で終わるし、3曲目にはコツが分かって「聴こえなかった音が聴こえる」感覚が出てきます。耳コピは「やった分だけ確実に上手くなる」スキルなので、地道にコツコツ積み上げていきましょう。


